
スタッフのときおです。
店頭でもよく聞かれる「結局どう考えればいいの?」という話。
【山道具の話】では、実際に山で使う時の感覚も交えながら、道具選びや使い方をできるだけわかりやすく解説していきます。
夏のレイヤリング、“暑いけど寒い”夏山を快適に歩くための足し算・引き算
夏山というと、
「とにかく暑いから涼しい服を着ればいい」
と思われがちです。
もちろん間違いではありません。
でも実際に山へ行くと、
・登りでは汗だく
・山頂では風が冷たい
・稜線では日差しが強烈
・雨が降ると一気に寒い
ということが普通に起こります。
街では暑かったのに、山頂では寒くて慌てて上着を着る。
そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
だからこそ夏のレイヤリングは、単純に「暑さ対策」だけで考えるとうまくいきません。
夏のレイヤリングで考えるべき3つの要素
夏のレイヤリングを考える時に大切なのは、
・汗処理
・日差し対策
・熱対策
この3つです。
汗処理
まず一番重要なのが汗への対応。
登山は歩き続けるスポーツです。
特に夏は大量に汗をかきます。
汗をかくこと自体は悪いことではありません。
むしろ体温を下げるための大切な機能です。
問題なのは、汗で濡れた状態のまま風に吹かれたり休憩したりすること。
歩いている時は暑くても、止まった瞬間に寒く感じる経験をしたことがある人も多いと思います。
夏でも汗冷えは起こります。
だからベースレイヤー選びが重要になります。
日差し対策
夏山では紫外線も大敵です。
標高が上がるほど紫外線は強くなります。
特に森林限界を越えたアルプスの稜線では、想像以上に体力を奪われます。
以前は、
「暑いから半袖」
が定番でした。
でも最近は、
・薄手の長袖
・フード付きシャツ
・サンフーディ
を選ぶ人もかなり増えています。
直射日光を遮ることで、かえって涼しく感じることもあるからです。
最近はサンプロテクション性能を持ったウェアも増えていますし、日傘を使う人も増えてきました。
数年前なら少数派でしたが、今では夏山の定番装備になりつつあります。
熱対策
汗処理と似ていますが、熱対策は少し違います。
人によって発汗量は違うし、暑さへの強さも違います。
同じ山を歩いていても、
「暑い!」
と言う人もいれば、
「ちょうどいい」
と言う人もいる。
だからレイヤリングには正解がありません。
自分の体質も重要な判断材料になります。
夏のレイヤリングを難しくするのは環境の変化
夏山が難しいのは環境変化が大きいからです。
一般的に気温は標高が100m上がるごとに約0.6℃下がると言われています。
例えば標高500mの登山口で30℃あった場合、標高3000mでは単純計算で15℃前後。
さらに風が吹けば体感温度はもっと下がります。
つまり、
登山口では真夏。
山頂では春や秋。
そんなことが普通に起こるんです。
さらに、
・朝晩は寒い
・日中は暑い
・風が吹くと寒い
・雨が降ると一気に冷える
という変化もあります。
だから「朝から夕方まで同じ服装で快適」ということ自体が難しいんです。
山の楽しみ方でもレイヤリングは変わる
もう一つ大事なのが運動量。
実はこれがかなり大きい要素です。
例えば同じ夏のアルプスでも、
写真を撮りながらゆっくり歩く人。
コースタイムより速く歩く人。
トレラン感覚で動く人。
では必要な服装が変わります。
発熱量が全然違うからです。
行動中と停滞中は分けて考える
レイヤリングで失敗しやすいのが、
「歩いている時」と「止まっている時」を同じ基準で考えること。
歩いている時は暑い。
でも休憩すると寒い。
山小屋やテント場ではさらに寒い。
だから、
・行動中に着るもの
・休憩中に着るもの
・宿泊時に着るもの
を分けて考えることが大切です。
ドライレイヤーは暑さ対策ではない
ここは勘違いされやすいポイントです。
ファイントラックのドライレイヤーや、ミレーのドライナミックメッシュ。
夏になると注目されます。
ただし、これらは暑さ対策の道具ではありません。
役割は汗冷え対策です。
汗を肌から離し、濡れによる冷えを防ぐためのもの。
つまり、
本来は体温を下げるための汗を肌から遠ざける仕組みです。
だから人によっては、
「むしろ暑く感じる」
こともあります。
汗冷えしやすい人には非常に効果的。
でも全員が涼しく感じるわけではありません。
ここは知っておきたいポイントです。
シーン別レイヤリングの考え方
夏の日帰り低山ハイク
暑さ対策を重視。
・薄手のベースレイヤー
・サンフーディや薄手長袖
・レインウェア
・休憩用の薄手防寒着
最近は半袖よりも、薄手長袖で日差しを遮るスタイルも増えています。
日傘もかなり有効です。
夏の日帰りアルプス
標高差や風への対応が必要。
・薄手ベースレイヤー
・サンフーディや薄手シャツ
・ウィンドシェル
・レインウェア
・薄手フリースや軽量インサレーション
山頂や稜線では真夏でも寒く感じることがあります。
夏のアルプス縦走
数日間歩く前提なので対応力重視です。
例えば、
行動中は
・ベースレイヤー
・サンフーディ
・ウィンドシェル
雨や強風時は
・レインウェア
休憩時や山小屋では
・薄手フリース
・化繊インサレーション
・軽量ダウンジャケット
といった組み合わせ。
歩いている時と止まっている時で着るものを分けて考えるのがポイントです。
夏のテント泊登山
意外と忘れられがちなのが夜の寒さ。
行動中は暑くても、
テント場で夕食を食べる頃にはかなり冷えることがあります。
特に標高2500〜3000mのテント場では、真夏でも朝晩は5〜10℃程度になることも珍しくありません。
そのため、
・ダウンジャケット
・化繊インサレーション
・ダウンパンツ
などを持っていくこともあります。
日中何を着るかだけではなく、
「夜をどう過ごすか」
まで考えるのがテント泊のレイヤリングです。
一つの正解を探さない
夏山は暑さ対策だけで考えると失敗しやすいです。
むしろ、
「暑い時にどうするか」
と
「寒くなった時にどうするか」
の両方を考えるのがレイヤリングです。
だから、
「この組み合わせが正解」
というものはありません。
天気。
標高。
体質。
運動量。
歩き方。
全部によって変わります。
一つのパターンで全て解決しようとするより、
いくつかの組み合わせを持っておく方が対応しやすい。
ただし持ちすぎると荷物が重くなる。
そのバランスを考えるのもレイヤリングの面白さです。
夏山は暑い。
でも、暑いだけではない。
そのことを知ると、服選びが少し変わってきます。
山道具選びは、「一番スペックが高いもの」を選ぶことではなく、「自分の山に合っているか」を探すこと。
カタログでは見えない部分を、また次回の【山道具の話】で。

























